201. 小野小町
あはれなりわが身の果てや浅緑 つひには野辺の霞と思へば
202. 鑑真和上
願わくば坐して死なん
203. 最澄
心形久しく労して 一生ここに窮まれり
204. 花山天皇
われ死ぬるものならば、まずこの女宮達をなん、忌のうちに皆とり持て行くべき
205. 鳥羽天皇
常よりも睦まじきかな郭公(ほととぎす) 死出の山路の友と思へば
206. 近衛天皇
虫の音のよわるのみかは過ぐる秋を 惜しむ我が身ぞまづ消えぬべき
207. 源為義
父を斬る子 子に斬らるる父 斬るも斬らるるも宿執の拙き事 恥ずべし恥ずべし 恨むべし恨むべし
208. 源頼政
埋れ木の花さく事もなかりしに 身のなるはてぞ悲しかりける
209. 源實朝
出でて去なば主なき宿と成りぬとも 軒端の梅よ春をわするな
210. 足利家時
わが命をちぢめて、三代の中に天下を取らしめ給へ
211. 平清盛
やがて討手を遣わし 頼朝の首をば刎ねて 我が墓の前に懸くべし それぞ孝養にてあらんずる
212. 木曾義仲
所々で討たれんよりも 一所でこそ討死をもせめ
213. 平重衡
願わくば逆縁をもって順縁とし 只今最後の念仏によって 九品蓮台に生を遂ぐべし
214. 源義経
御経もいま少しなり 読み果つる程は 死したりとも 我を守護せよ
215. 後醍醐天皇
身はたとえ南山の苔に埋るとも 魂魄は常に北闕の天を望まんと思う
216. 真田幸村
関東軍 百万も候え 男は一人も無く候
217. 武田信玄
大ていは地に任せて肌骨好し 紅粉を塗らず自ら風流
218. 酒井忠勝
死にともなあら死にともな死にともな ご恩をうけし君を思えば
219. 早野巴人
こしらへて有りとは知らず西の奧
220. 曲亭馬琴
世の中の厄をのがれてもとのまま 帰るは雨と土の人形
221. 東福門院和子
武蔵野の草葉の末に宿りしか 都の空にかえる月かげ
222. 安国寺恵瓊
清風払明月 明月払清風
223. 楠木正行
返らじとかねて思えば梓弓 なき数に入る名をぞ留むる
224. 宗峰妙超
仏祖を截断して 吹毛常に磨く 機輪転処して 虚空に牙を咬む
225. 北条氏政
吹きと吹く風な恨みそ花の春 紅葉も残る秋あらばこそ
226. 春日局
西に入る月を誘い法を得て 今日ぞ火宅をのがれけるかな
227. 絵島
浮き世にはまた帰らめや武蔵野の 月の光のかげもはづかし
228. 阿部重次
天てらす月のひかりともろもろに 行すへすゞし曙のそら
229. 平田靱負
住みなれし里も今更名残りにて 立ちぞわづらふ美濃の大牧
230. 瀧善三郎
きのふみし夢は今更引かへて 神戸が宇良に名をやあげなむ
231. 都々逸坊扇歌
都々逸もうたいつくして三味線枕 楽にわたしはねるわいな
232. 大田實
大君の御はたのもとにして死してこそ 人と生まれし甲斐ぞありけり
233. 松岡洋右
悔いもなく怨みもなくて行く黄泉(よみじ)
234. 林子平(六無斎)
親も無し妻無し子無し版木無し 金も無けれど死にたくも無し
235. 河上彦斎
君が為め 死ぬる骸に 草むさば 赤き心の 花や咲くらん
君を思い君の御法に死ぬる身を ゆめ見こりなそつくせ世の人
かねてよりなき身と知れど君が世を 思う心ぞ世に残りける
236. 平徳子(建礼門院)
いざさらばなみだくらべむ郭公(ほととぎす) われもうき世(よ)にねをのみぞなく
237. 赤松義村
立ちよりて影もうつさじ流れては 浮世を出る谷川の水
238. 尼子勝久
都渡劃断す千差の道 南北東西本郷に達す
239. 天野隆良
不来不去 無死無生 今日雲晴れて 峰頭月明らかなり
240. 伊香賀隆正
思いきや千年をかけし山松の 朽ちぬるときを君に見んとは
241. 伊丹道甫
あたの世にしばしが程に旅衣 きて帰るこそ元の道なれ
242. 大内晴持
大内を出にし雲の身なれども 出雲の浦の藻屑とぞなる
243. 大嶋澄月
澄む月の暫し雲には隠るとも 己が光は照らさゞらめや
244. 大嶋照屋
仮初めの雲隠れとは思へ共 惜しむ習ひそ在明の月
245. 太田隆通
秋風の至り至らぬ山陰に 残る紅葉も散らずやはある
246. 岡部隆豊
白露の消えゆく秋の名残とや しばしは残る末の松風
247. 岡谷隆秀
時有りて自から至り時有りて又還る 清風水を度り明月天に在り
248. 小幡義実
宝剣を呑却して名弓を放下す 只斯の景のみ有り一陣の清風
249. 垣並房清
勝敗の迹を論ずること莫かれ 人我暫時の情一物不生の地 山寒うして海水清し
250. 蒲生大膳
まてしばし我ぞ渉りて三瀬川 浅み深みも君に知らせん
コメント