小百合さく 小草(おぐさ)がなかに 君まてば 野末にほひて 虹あらはれぬ
【作者】与謝野晶子
【意味】小百合の花が咲いている野原で、あなたを待っていると、野のはて美しく輝いて虹が出てきました。
それとなく 紅き花みな 友にゆづり そむきて泣きて 忘れ草つむ
【作者】山川登美子
【意味】気が付かれないように、華やかな恋を友にゆずって、こらえきれずにひとり泣いています。忘れ草を摘みながら。
なかなかに黙(もだ)もあらまし何すとか 相見そめけむ遂げざらまくに
【作者】大伴家持・万葉集
【意味】いっそ黙っていればよかったのを何故に逢いはじめたのだろう。遂げられそうもない愛なのに。
薄紙の 火はわが指を すこし灼き 蝶のごとくに 逃れゆきたり
【作者】斎藤史
【意味】薄い紙を燃やした火は、私の指をほんの少し焼き、まるで蝶のように逃げていきました。
ヒヤシンス 薄紫に 咲にけり はじめて心 ふるひそめし日
【作者】北原白秋
【意味】ヒヤシンスの花が、薄紫に咲いた。はじめて誰かに心がときめいた日のように。
恋ひ恋ひてあへる時だに愛(うつく)しき 言(こと)つくしてよ長くと思はば
【作者】大伴坂上郎女(おおとものさかのうえのいらつめ)・万葉集
【意味】何度も恋いてようやく逢えた時くらいは愛のあることばを聞かせて欲しい。この恋が長く続くようにと思うなら。
思へども験(しるし)もなしと知るものを なにかここだく吾が恋ひ渡る
【作者】大伴坂上郎女・万葉集
【意味】いくら恋しく思っても、何の甲斐もないと知っているのに、どうしてこれ程私はずっと恋し続けているのだろう。
黒髪に白髪交じり老ゆるまで かかる恋にはいまだあはなくに
【作者】大伴坂上郎女・万葉集
【意味】黒髪に白髪が混じって、これほど年寄るまで、こんな恋にはまだ出逢ったことはありませんことよ。
夏の野の茂みに咲ける姫百合の 知らえぬ恋は苦しきものぞ
【作者】大伴坂上郎女・万葉集
【意味】夏の野の繁みにひっそりと咲いている姫百合のように、人に知られない恋は苦しいものだ。
筑波嶺の 峰より落つるみなの川 恋ぞつもりて淵となりぬる
【作者】陽成院
【意味】筑波のいただきから流れ落ちてくる男女川(みなのがわ)が、 最初は細々とした流れから次第に水かさを増して深い淵となるように、恋心も次第につのって今では淵のように深くなっている。
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