あらざらむ この世のほか 思ひ出に いまひとたびのあふこともがな
【作者】和泉式部
【意味】私はこの世からいなくなります。だからこの世の思い出として、もう一度あなたに会いたい。
桐の葉も 踏み分けがたく なりにけり かならず人を 待つとなけれど
【作者】式子内親王
【意味】桐の落葉が積もり、通りにくくなるほどになってしまった。必ずしも、人を待っているというわけではないのですが。
君に恋ひ甚(いた)も術なみ楢山の 小松が下に立ち嘆くかも
【作者】笠女郎(かさのいらつめ)・万葉集
【意味】あなたが恋しくてたまらず、楢山の松の木の下に立って嘆き続けました。
陸奥の真野の草原遠けども 面影にして見ゆとふものを
【作者】笠女郎・万葉集
【意味】あなたは遠い陸奥の真野の草原ように遠いけれども、面影として私にはありありと見えます。
白鳥の飛羽山松の待ちつつぞ わが恋ひわたるこの月のころを
【作者】笠女郎・万葉集
【意味】白鳥の飛ぶ羽山の松のように、あなたに会えるのをずっと待っています。
我が命の全けむかぎり忘れめや いや日に異には念ひ益すとも
【作者】笠女郎・万葉集
【意味】私の生命がある限り、貴方のことは忘れません。日に日に思いが増すことはあっても。
朝霧のおほに相見し人ゆえに 命死ぬべく恋ひ渡るかも
【作者】笠女郎・万葉集
【意味】朝霧の中でお目にかかったあなたに、私は死にそうなほどの思いで、ずっと恋をし続けています。
伊勢の海の磯もとどろに寄する浪 恐(かしこ)き人に恋ひ渡るかも
【作者】笠女郎・万葉集
【意味】伊勢の海に打ち寄せる怒涛のように、そんな身も竦むほどの勿体ないお方に、私はずっと恋し続けています。
なにとなく 君に待たるる ここちして 出(い)でし花野の 夕月夜(ゆうづくよ)かな
【作者】与謝野晶子
【意味】何となくあなたが待ってるような気がして、月の美しい夕暮れに、花の咲き乱れる野原にやって来てしまいました。
君が行く道のなが路(て)を繰り畳ね 焼きほろぼさむ天の火もがも
【作者】狭野弟上娘子・万葉集
【意味】あなたが行く長い道を引き寄せ、畳んで、焼き尽くす天の火がほしい。
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