君がため 惜しからざりし命さへ 長くもがなと 思ひけるかな
【作者】藤原義孝
【意味】あなたのためなら、命は惜しくないけれどだけれど、今となっては、あなたといつまでも長く一緒にいたいと思うようにりました。
色見えで うつろふものは 世の中の 人の心の 花にぞありける
【作者】小野小町
【意味】目に見えずに色あせていくものは、世の中の人の心という花である。
われはもや 安見児(やすみこ)得たり 皆人の 得がてにすといふ 安見児得たり
【作者】藤原鎌足
【意味】わたしは安見児を手に入れることができた。人々が皆望んでも決して手に入れることの叶わなかった安見児をわがものとした。
忍れど 色に出にけりわが恋は ものや思ふと人の問ふまで
【作者】平兼盛
【意味】そっと忍んできたけれど、顔に出てしまって、「恋でもしているのですか?」と人に聞かれてしまうほどに。
結ぶ手の しづくににごる 山の井の あかでも人に 別れぬるかな
【作者】紀貫之
【意味】手ですくった水の滴で濁ってしまう山の井のように、心残りのあるままあの人と別れてしまった。
あしひきの山路越えむとする君を 心に持ちて安けくもなし
【作者】狭野弟上娘子・万葉集
【意味】あなたがつらい山道を越えていると思うと、私も気が気でありません。
つれづれと 空ぞ見らるる 思ふ人 天降(あまくだ)り来む ものならなくに
【作者】和泉式部
【意味】なんとなく空を眺めている。愛しい人が天から降りてくるわけもないのに。
あかねさす紫草野(むらさきの)行き標野(しめの)行き 野守は見ずや君が袖振る
【作者】額田王・万葉集
【意味】あかねさす紫草の咲く野を行き、標野を行きながら、野守が見ているではないだろうか。あなたが私に袖を振るのを。
あしひきの山のしづくに妹待つと 我立ち濡れぬ山のしづくに
【作者】大津皇子(おおつのみこ)・万葉集
【意味】私はあなたを待ち続けて、あしひきの山の雫に濡れてしまった。
詫びぬれば 今はた同じ難波なる 身をつくしても逢はむとぞ思ふ
【作者】元吉親王
【意味】こうなったら、何をしても同じこと。難波にある「澪標(みおつくし)」のように、「身を尽くして」でもあなたに逢いたい。
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