隠神刑部(いぬがみぎょうぶ)
伊予国(現・愛媛県)松山に伝わる化け狸。『証城寺の狸囃子』『分福茶釜』と並んで日本三大狸話の一つに数えられる『松山騒動八百八狸物語』に登場する。
大かむろ
徳島県や佐渡島に現れ、巨大な顔で人間を脅かすとされる。 人を驚かすことのみが目的であり、直接的な危害を加えることはない。
大煙管(おおぎせる)
徳島県三好郡三庄村大字毛田村(現・東みよし町)に伝わる化け狸。 吉野川に青石瀬という難所があり、ここでは破損した舟や筏が臨時に停泊することがあったが、そうしたときに夜更け現れ「煙草をくれ」と言って煙管を突き出す。これに対して煙草を差し出さないと、舟を沈められるなど様々な怪異が起きる。
蚊帳吊り狸(かやつりたぬき、かやつりだぬき)
徳島県美馬市(旧美馬郡三島村舞中島)に伝わる妖怪。 寂しい夜道を人が歩いていると、道の真ん中に蚊帳が吊ってある。 蚊帳をまくり上げてみると、その中にはまた蚊帳が吊ってある。 前にも後ろにも蚊帳がある状態となり、先へ進むどころかもとの場所へ戻ることもできず、一晩中その場で右往左往する羽目になってしまう。
絹狸(きぬたぬき)
鳥山石燕による『百器徒然袋』に描かれている日本の妖怪。
黄八丈を身にまとい腹ではなく衣を打って音を出す、姿を人に見せることは無い化けタヌキであるとされる 。
芝右衛門狸、柴右衛門狸(しばえもんたぬき、しばえもんだぬき)
兵庫県淡路島に伝わる化け狸。佐渡島の団三郎狸、香川県の太三郎狸と並び、日本三名狸に数えられている。
その昔、淡路に芝右衛門という農民がいたが、彼のもとによく老いたタヌキがやって来て残飯を求めていたので、芝右衛門は哀れに思い、わざわざ飯を残してやっていた。
ある日、芝右衛門はタヌキを面白がり「人間にでも化けてみろ」と言うと、タヌキは50歳ほどの人間の姿となり、日に日に芝右衛門のもとを訪れるようになった。そして様々な物語や古事を詳しく聞かせたので、芝右衛門は次第に物知りになり、人々にもてはやされた。
芝太郎(しばたろう)
淡路島に伝わる化け狸で、淡路で勢力の高い狸の芝右衛門(しばえもん)の息子にあたる狸。柴助(しばすけ)などとも呼ばれる。
高坊主(たかぼうず)
主に四国に伝わる妖怪。 路上に現われて人を脅かす妖怪。徳島の俗信では、麦の穂が出た時期、夕方遅くまで遊んでいると高坊主に化かされるといわれる。香川では途方もなく背の高い坊主で、四辻に現れるという。
太三郎狸(たさぶろうたぬき、たさぶろうだぬき)
香川県高松市屋島に伝わる化け狸。 その昔、あるタヌキが矢傷で死にかけたところを平重盛に助けられ、恩義から平家の守護を誓った。その子孫が太三郎狸といわれる。
狸憑き(たぬきつき)
人に憑依するタヌキの霊。四国や佐渡島の他、青森県や岩手県などに伝えられている。 タヌキに憑かれた際の症状は様々だが、よく言われるのは大食になるというものである。腹が膨れるのとは逆に本人は衰弱し、やがて命を落とすという。ほかにも、原因不明の病気や、憂鬱状態や饒舌状態になったり、わけもなく暴力をふるったり性行動に走ったり、腐敗した物を食べるといった異常行動をとるようになるともいう。
団三郎狸(だんざぶろうだぬき)
新潟県佐渡郡相川町(現・佐渡市)に伝わる化け狸。淡路島の芝右衛門狸、香川県の太三郎狸と並び、日本三名狸に数えられている。
佐渡のタヌキの総大将。人が夜道を歩いているところに壁のようなものを作り出したり、蜃気楼を出したりして人を化かしたり、木の葉を金に見せかけて買物をしていた。
悪さをするばかりでなく、困った人には金を貸していた。
衝立狸(ついたてだぬき)
徳島県美馬郡脇町(現・美馬市)に伝わる化け狸。
脇町から隣りの新町へ向かう途中にある高須という寂しげな場所に現れたという。人が夜道を歩いていると、大きな衝立となって道の真ん中に現れる。大抵の人は足止めをされたことに驚いて引き返すが、強気な人が丹田(臍)に力を込め、構わずに突き進むと、そのまま通り抜けることができるという。
日本三名狸
日本各地の民話などに登場する化け狸の中でも有名な3匹の狸。
- 佐渡団三郎狸(新潟県佐渡島)
- 淡路芝右衛門狸(兵庫県淡路島)
- 屋島太三郎(やしまのたさぶろう)狸(香川県屋島)
のた坊主(のたぼうず)
上半田(愛知県半田市堀崎町付近)の古狸の妖怪。 人間に化けて、白と黒のだんだら模様のでんちを着て毎年酒蔵に勝手に入ってきて原酒を飲んでいき、のたのたと逃げていく。
魔法様(まほうさま)
備前加茂(現在の岡山県)の化け狸として名高い伝説上のタヌキ「キュウモウ狸(キュウモウだぬき)」を牛馬の守護神として祀る信仰。
豆狸(まめだぬき)
日本に伝わるタヌキの妖怪。西日本に伝承されているほか、徳島県の豆狸は夜になると山頂に火を灯したといい、それは次の日に必ず雨が降る知らせだったという。
茂林寺の釜(もりんじのかま)
松浦静山の随筆『甲子夜話』に登場する化け狸の話である。昔話『分福茶釜』のモデルとされる。 上州(現・群馬県)の茂林寺という寺が僧が愛用している茶釜は、いくら汲んでも湯が尽きないという不思議な釜で、僧侶の集まりがあるときはこの釜で茶を振舞っていた。
以上、『日本各地の化け狸一覧と伝承|日本の妖怪』を紹介しました。
1994年7月16日に公開されたスタジオジブリ制作・高畑勲監督のアニメーション映画「平成狸合戦ぽんぽこ」をご覧になったことがある方は、映画に登場した狸と今回ここで紹介した狸が合致するところもあると感じたのではないでしょうか? 巨匠・高畑監督の作った狸の映画はたくさんの伝承を調べて作られた映画だったんですね。
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