狐の怪異
狐の嫁入り(キツネノヨメイリ)
闇夜(やみよ)に山野で狐火が連なっているのを、狐の嫁入りの提灯(ちょうちん)行列に見立てて、いったもの。狐の行列ともいう。
日が当たっているのに、にわか雨の降ること。二者とも、狐に化かされていると錯覚して、このような呼び方が生まれたと思われる。
狐火
火の気のないところに、提灯または松明のような怪火が一列になって現れ、ついたり消えたり、一度消えた火が別の場所に現れたりするもので、正体を突き止めに行っても必ず途中で消えてしまうという日本全域に伝わる怪火。
狐憑き
の話は日本全国各地に見られる。キツネに憑かれた者は精神病のように異常な状態になるものと考えられている。
キツネが守護霊のように家系に伝わっている場合もあり、管狐、オサキ、野狐、人狐が憑くことも狐憑きと呼ばれる。これらの家はキツネを使って富を得ることができたり、憎い相手を病気にしたり、その者の所有物、作物、家畜を呪うこともできるといわれ、他の家から忌まれた。
管狐(くだぎつね)
日本の伝承上における憑き物の一種である。長野県をはじめとする中部地方に伝わっており、東海地方、関東地方南部、東北地方などの一部にも伝承がある。
名前の通りに竹筒の中に入ってしまうほどの大きさ、またはマッチ箱くらいの大きさで75匹に増える動物などと、様々な伝承がある。
別名、飯綱(いづな)、飯縄権現とも言い、新潟、中部地方、東北地方の霊能者や信州の飯綱使い(いづなつかい)などが持っていて、通力を具え、占術などに使用される。
オサキ
日本に伝わるキツネの憑き物。「オサキギツネ」ともいう。「尾先」と表記されることもある。「尾裂」「御先狐」「尾崎狐」などとの表記もある。
関東地方の一部の山村で行われる俗信であり、埼玉県、東京都奥多摩地方、群馬県、栃木県、茨城県、長野県などの地方に伝わっている。
人狐
中国地方に伝わる憑き物。
テンに似た動物の霊といわれ、これに憑かれた者は腹痛を患ったり、精神に異常を来たすといわれる。
妖狐
狐が霊となり神となった「霊狐」の事で、300年以上生きると妖術を身につけ、妖狐になるといわれる。
善狐
人々に幸運を運ぶという縁起の良い妖狐。憑くと幸運になる。善狐は農業の神の使いとされて、お稲荷さまとして皆に慕われた。稲荷神の眷属。
赤狐(せきこ)
神道系の妖狐。通常の毛色の狐を「赤毛」と形容する場合もある。
白狐(びゃっこ、はくこ)
白い毛色を持ち、人々に幸福をもたらします。善狐の代表で、稲荷神社に祀られているお稲荷様の狐も、ほとんどが白狐です。
黒狐(くろこ、こくこ)
黒い毛色を持ち、北斗七星の化身と呼ばれています。
銀狐(ぎんこ)・金狐(きんこ)
金狐:日をシンボルとした妖狐
銀狐:月をシンボルとした妖狐
それぞれ金色と銀色の毛色を持つ。
稲荷神である荼枳尼天(ダキニ)の眷属であり、精霊である。
九尾の狐(きゅうびのきつね)
尻尾が9本ある狐。
九尾の狐として知られ、白面金毛九尾の狐がいます。”九尾の妖狐”や、単純に”九尾”と呼ばれる。
金毛九尾狐
九尾の狐のこと。
自分を信仰すれば、善狐のように崇める人を助け、祝福はするが崇めない場合は野狐としての災いや不幸を及ぼす。
玄狐(くろきつね)
北海道松前町の「玄狐稲荷」に伝わる黒狐。
野狐(やこ)
日本では、人間に対して悪事やいたずらをする狐全般をさして野狐という呼び方が用いられている。
八尾狐
江戸時代に春日局が書いたとされる『東照大権現祝詞』に、「三代将軍徳川家光の夢に八尾の狐が現われ、患っていた病が治る旨を告げて去っていった」とあり、、家光がこれを絵に描かせた事がつづられている。
絵師狩野探幽作『八尾狐図(やおのきつねず)』がある。
おさん狐
おさんわ狐ともいう。
美女に化けて妻帯者や恋人のいる男へ言い寄ってくる狐の妖怪。
篠崎狐
江戸時代の奇談集『梅翁随筆』に登場する化け狐。
御先稲荷(オサキトウガ)
稲荷神の眷属であり、豊作を運ぶ善狐で、そのほとんどが白狐である。
お稲荷さんとは本来「稲荷神(稲荷明神、倉稲魂命、岩倉稲姫魂命、保食神、宇迦之御魂大神ほか)」の事を指し、眷属の狐は御先稲荷(オサキトウガ)と呼ばれる。
葛の葉(くずのは)
伝説上のキツネの名前。陰陽師として知られるのちの安倍晴明の母と言われている。
黒狐
北斗七星の化身と呼ばれる妖狐。 王者が太平をもたらした時に姿を現す。
妖狐の別称
妖狐や化け狐、あるいは普通の狐を以下の呼び名で呼ぶこともあるようです。
伊賀専(いがたうめ)
おこんこんさま
おとうか
けつね
迷わし鳥(まよわしどり)
野干(やかん)
野狐(やこ)
以上、『日本の伝承『稲荷神、お狐さま、妖狐、化け狐』名前・種類一覧』を紹介しました。
江戸末期の随筆『善庵随筆』などにある皆川淇園の説によると、
“上位から天狐、空狐、気狐、野狐の順とされる。これらの内、実体を視覚で捉えることができるのは野狐のみであり、気狐以上は姿形がなく、霊的な存在とされる。”
とあり、最上位である天狐は神に等しともいわれています。
神に等しい狐から怪異まで、ここで紹介した狐の種類の多さ、狐の伝承の多さから、狐が沢山の人に親しまれて来たことがわかります。狐は日本人の生活に密着した存在だったんですね。
こちらもどうぞ
コメント