現代の脇付と江戸時代の脇付を一覧で紹介していきます。
脇付とは、手紙を出す相手の宛名に書き添えることで、敬意や注意を表すために使用する語のことです。
普段の生活では殆ど見られなくなった脇付ですが、「御中」など一部の脇付を目にしたことはありませんか? この脇付という伝統は江戸時代の資料にも残っており、一般的なものから僧侶に当てる場合など様々で、相手先によって使い分けられていたようです。
また、現代でもその名残として、医師同士の親書や医療機関の発行する紹介状などでは、宛名を○○先生御机下などとすることが慣例になっているようです。
脇付の一覧
差出人が男性:一般的な脇付
- 案下(あんか)
- 机下(きか)
- 座右(ざゆう)
- 梧下(ごか)
- 梧右(ごゆう)
- 几下(きか)
- 足下(そっか)
- 座下(ざか)
- 硯北(けんぽく)
- 研北(けんぽく)
差出人が男性:目上の人への脇付
- 侍史(じし)
- 侍曹(じそう)
- 尊下(そんか)
- 閣下(かっか)
- 貴下(きか)
- 玉案下(ぎょくあんか)
- 玉机下(ぎょくきか)
差出人が男性:両親への脇付
- 膝下(しっか)
- 御前(みまえ)に
差出人が女性:一般的な脇付
- 御側(おそば)
- 御前(おんまえ・みまえ・みもと)に
- 御許(おんもと)
- 御許(おんもと)に
- 御許(おんもと)へ
- 御手許(おてもと)
差出人が男性・女性:師や目上の方への脇付
- 函丈(かんじょう)
差出人が男性・女性:高貴な人への脇付
- 台下(だいか)
- 尊前(そんぜん)
- 玉案下(ぎょくあんか)
外脇付(そとわきづけ)一覧
外脇付けとは、手紙や文書・添付書類についての説明や、同封物の取り扱い方を封筒に書き示す語です。
本人以外は開封禁止
- 親展(しんてん)
- 親披(しんぴ)
- 直披(じきひ)
重要な文書
- 重要
返信してください
- 拝答
- 待貴答
- 乞返答
迅速に対処してください
- 至急
- 急信
〇〇が同封されています
- 〇〇在中(ざいちゅう)
古文書の脇付
江戸時代の頃に使われていた脇付を紹介します。
脇付
- 御披露/ごひろう
- 参人々御中/まいるひとびとおんちゅう
- 人々御中/ひとびとおんちゅう
- 人々中/ひとびとちゅう
- 御宿所/ごしゅくしょ
- 閤下/ごうか
- 門下/もんか
- 台下/たいか
- 臺下/たいか
- 執事/しつじ
- 床下/しょうか
- 床頭/しょうとう
- 机頭/きとう
- 案頭/あんとう
- 梧右/ごゆう
- 坐右/ざゆう
- 函丈/かんじょう
- 榻右/とうゆう
- 足下/そくか
- 机下/きか
- 牀下/しょうか
- 坐下/ざか
- 梧下/ごか
- 榻下/とうか
- 机右/きゆう
- 玉机下/ぎょくきか
- 玉案下/ぎょくあんか
- 玉展/ぎょくてん
- 台展/たいてん
- 手展/しゅてん
- 玉牀下(玉床下)/ぎょくしょうか
- 尊床下/そんしょうか
- 貴床下/きしょうか
- 梧枯/ごこ
- 案下/あんか
- 侍史/じし
- 左右/さゆう
- 尊下/そんか
- 貴下/きか
- 手披/しゅひ
- 御直披/ごじきひ
- 御直覧/ごじきらん
寺院(僧侶)への脇付
【禅宗】
- 参侍衣閤下/さんじえごうか
- 衣鉢侍者禅師/えはつじしゃぜんじ
- 侍衣閣下/じえごうか
- 侍衣禅師/じえぜんじ
- 金猊下/きんげいか
- 猊床下/げいしょう
- 侍者御中/じしゃおんちゅう
- 玉窓下/ぎょくそうか
- 侍司下/じしか
- 玉机下/ぎょくきか
- 書案下/しょあんか
- 座右/ざゆう
- 机下/きか
- 牀下(床下)/しょうか
- 几下/きか
- 足下/そくか
【浄土宗】
- 侍者中/じしゃちゅう
- 御同宿御中/おどうしゅくおんちゅう
- 御同宿中/おどうしゅくちゅう
- 講床下/こうしょうか
- 法床下/ほうしょうか
- 法坐下/ほうざか
- 閤下/こうか
【律宗】
- 知事御中/ちじおんちゅう
- 侍者御中/じしゃおんちゅう
【天台宗・真言宗】
- 御児御中/おじおんちゅう
- 御同宿御中/ごどうしゅくおんちゅう
- 御児中/ごじちゅう
- 御同宿中/ごどうしゅくちゅう
- 御坊中/ごぼうちゅう
- 尊床下/そんしょうか
- 玉案下/ぎょくあんか
- 床下/しょうか
【時宗】
- 御同宿御中/ごどうしゅくちゅう
- 御近習中/ごきんじゅちゅう
- 近習御中/きんじゅおんちゅう
【宗派不問】
- 尊床下/そんしょうか
- 貴牀下(貴床下)/きしょうか
- 玉床下/ぎょくしょうか
- 玉案下/ぎょくあんか
- 机下/きか
- 御近習中/ごきんじゅちゅう
- 御同宿中/ごどうしょくちゅう
【所化】
- 学窓中/がくそうちゅう
- 学机下/がくきか
- 几下/きか
- 梧右/ごゆう
返信の脇付
- 御報人々御中/ごほうひとびとおんちゅう
- 参貴報/まいるきほう
- 尊報/そんほう
- 貴報/きほう
- 御報/ごほう
- 御返報/ごへんとう
- 御返事/ごへんじ
- 御請/おうけ
- 尊答/そんとう
- 貴答/きとう
- 奉復/ほうふく
- 拝復/はいふく
- 貴酬/きしう
- 拝答/はいとう
- 酬答/しゅうとう
- 回示/かいじ
- 回酬/かいしゅう
現代の脇付と江戸時代の脇付一覧のまとめ
脇付の一覧を紹介しました。 冒頭にもありましたように脇付は敬意をはらう語のことです。
現代で脇付を見る機会がないということは敬意に対する概念が少しずつ変わってきているからかもしれませんね。
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