忘れじの 行く末までは かたければ 今日をかぎりの 命ともがな
【作者】儀同三司母
【意味】「いつまでも忘れない」と言ったその言葉を、この先も変わらないとは思えません。ですから、そう言ってくれた今日を最後に死んでしまいたいものです。
我を待つと君がぬれけむあしひきの 山のしづくにならましものを
【作者】石川郎女(いしかわのいらつめ)・万葉集
【意味】私を待っていて濡らした雫ように、私も雫になってあなたに寄り添いたいものです。
古りにし嫗にしてやかくばかり 恋に沈まぬ手童(わらは)のごと
【作者】石川郎女・万葉集
【意味】年老いた私があなたに恋をして、まるで子供のように恋にうつつをぬかしています。
もの思へば 沢の蛍も わが身より あくがれ出づる たまかとぞ思ふ
【作者】和泉式部
【意味】思い悩んでいると、この水辺を飛びかう蛍も、私の体から出た魂かと思ってしまいます。
ありつつも君をば待たむうち靡(なび)く わが黒髪に霜の置くまでに
【作者】磐之媛命(いわのひめのみこと)・万葉集
【意味】このまま恋しいあなたを待ちましょう。私の黒髪に霜がおりるまで(白髪になるまで)。
秋の田の穂の上霧(き)らふ朝がすみ 何方(いづへ)の方にわが恋ひやまむ
【作者】磐之媛命・万葉集
【意味】秋の朝、稲穂の上に霞がたなびくように、私の恋はあなただけを思ってただよっています。
君が行き日長くなりぬ山たづね 迎へか行かむ待ちにか待たむ
【作者】磐之媛命・万葉集
【意味】あなたが私のもとを去って長い日が経ちました。貴方のおられる山奥まで訪ねて行きましょうか、お帰りをひたすら待ちましょうか。
かくばかり恋ひつつあらずは高山の 磐根し枕(ま)きて死なましものを
【作者】磐之媛命・万葉集
【意味】恋い慕っている苦しさに耐えるより、高い山の岩を枕にして死んだほうが良いくらいです。
我が背子と二人見ませばいくばくか この降る雪の嬉しからまし
【作者】光明皇后(こうみょうこうごう)・万葉集
【意味】夫のあなたと一緒に見れば、この雪景色も嬉しいと思うでしょう。
黒髪の みだれもしらず うちふせば まづかきやりし 人ぞ恋しき
【作者】和泉式部
【意味】黒髪が乱れているのに気がつかず横たわっていると初めてこの髪をかき撫でてくれた人が恋しくて仕方がない。
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