11.大伴池主
桜花今ぞ盛りと人は言へど我は寂しも君としあらねば
桜の花が今盛りだと人は言うけれど、私はさみしく思います。
あなたが一緒にいないので。
12.大伴家持・万葉集
あしひきの 山桜花 一目だに 君とし見てば 我(あ)れ恋ひめやも
山に咲く桜の花を、ほんの一目でもあなたと一緒に眺められたなら、こんなにも花が恋しいとは思わないのに
13.与謝野晶子
清水へ 祇園をよぎる 桜月夜 こよひ逢ふ人 みな美しき
14.小野小町
花の色は うつりにけりな いたづらに わが身世(みよ)にふる ながめせしまに
桜の花の色がすっかり色あせてしまったのと同じように、私の容姿もすっかり衰えてしまった。桜に降る春の長雨を茫然と眺め、むなしく恋の思いにふけってしまった間に。
15.大伴家持・万葉集
鴬の 鳴き散らすらむ 春の花 いつしか君と 手折(たを)りかざさむ
ウグイスが鳴いては散らしている桜花を、いつかあなたと手折って髪飾りにしたい
桜にまつわる恋の歌を紹介しました。 春の情景や歌人の心情が伝わってくる素敵な歌ばかりですね。
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