4. 水の状態・性質|見え方や変化としての水
水が澄む、濁る、満ちる、引く――。 ここでは、水そのものが持つ状態や質感、見た目の変化を表す古語を集めました。 動きではなく、水が「どのように在るか」に焦点を当てた言葉です。
- ささにごり
水がごくわずかに濁った状態。完全には澄みきらない、淡いにごりを含む。 - 澄む(すむ)
水が濁りなく透き通ること。底まで見える静かな状態。 - 濁る(にごる)
水に不純物が混じり、透明さを失うこと。見通しが悪くなる状態。 - 清し(きよし)
水が澄み、汚れを感じさせないさま。清浄で落ち着いた印象を含む。 - 冷ゆ(ひゆ)
水が冷たくなること。触れたときに冷気を感じさせる状態。 - 温む(ぬるむ)
水が冷たさを失い、やや温かくなること。季節の移ろいを含む表現。 - 浅し(あさし)
水の深さが少ないこと。底が近く、軽やかな印象をもつ状態。 - 深し(ふかし)
水の深さが大きいこと。奥行きや重さを感じさせる状態。 - 満ち欠け(みちかけ)
水量が増減すること。特に潮や水位の周期的な変化を指す。 - 水泡(みなわ)
水面に生じる泡。すぐに消えるはかなさを含む状態。 - 泡(あわ)
水の中や表面に生じる小さな気泡。軽く、定まらない性質。 - 沫(あわ)
水が砕けて生じる細かな泡。飛び散るような泡を指す。 - 水煙(みづけぶり)
水しぶきが霧のように立ちのぼる状態。水の動きが空気に広がるさま。 - 白波(しらなみ)
波が砕け、白く見える状態。風や流れの強さを示す。 - 細波(ささなみ)
水面に立つ細かな波。穏やかで繊細な動きを含む。 - 荒まし(あらまし)
水や波の音が荒々しく激しいさま。静けさを破る水の強い気配を示す形容。
5. 水面・情景・詩語|目に映り、心に残る水のことば
水面に映る光や影、音や余韻として感じられる水の姿を表す古語を集めました。 直接的な動きや性質ではなく、情景や気配として水を捉えた言葉が並びます。 詩や物語の中で、水がもつ静かな存在感を伝える語群です。
- 水影(みづかげ)
水面に映る物の影。揺らぎを伴いながら、形を一時的に映し出す水の表情。 - 水鏡(みづかがみ)
鏡のように物を映す静かな水面。澄みきった水の平らな状態を表す。 - 花の鏡(はなのかがみ)
花が水面に映った姿を鏡に見立てた表現。儚さや美しさを含んだ詩語。 - 玉水(たまみづ)
清らかで美しい水。澄みきった水を宝玉になぞらえた呼び名。 - 若水(わかみづ)
新しい年の初めに汲む清浄な水。新しさや清新な気配を帯びる。 - 神水(しんすい)
神聖なものと結びつけて捉えられる水。清浄さが強調された表現。 - 水面(みなも)
水の表面。光や影、波が映り込み、刻々と表情を変える場所。 - 汀勝る(みぎはまさる)
水際の水かさが増すこと。静かに水位が高まる様子を含む表現。 - 水隠る(みがくる)
水の中に隠れて見えなくなること。水に包まれるような感覚を伴う。 - 浮き木(うきき)
水面に浮かぶ木片。流れに身を任せる小さな存在を示す。 - 行水(ぎやうず)
水を浴びること。自然の水に触れる涼やかな情景として用いられる場合に限る。 - 水路浅し(みづぢあさし)
水の流れる筋が浅くなっているさま。水量の少なさが景として表れる表現。 - 川淀(かはよど)
川の流れが緩み、水が滞る所。静まり返った水のたまり。 - 川音(かはおと)
川の水が流れることで生じる音。絶えず続く自然の響き。
水の古語は、日本語の感受性を伝えている
水をどう呼び、どう分けてきたかは、日本語が自然と向き合ってきた歴史そのものです。
ここに挙げた言葉は、読むだけでも情景が浮かび、使うことで表現に深みを与えてくれます。
心に残った語を、ぜひ自分の中の言葉として育ててみてください。
FAQ よくある質問
水を表す古語にはどんなものがありますか?
水を表す古語には、「水(みづ)」のような基本語のほか、「泉」「淵」「瀬」「渚」など、水の場所や状態を細かく言い分ける語があります。 流れの速さや深さ、澄み具合、水面の様子まで表現できる点が特徴です。
水の古語は、どんな場面で使われてきた言葉ですか?
水の古語は、和歌や物語の中で自然の情景を描くために多く使われてきました。 川の音や水面の揺らぎなど、目に見える景色だけでなく、気配や空気感を伝える役割も担っています。
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