2. 水の場所・地形|水が集い、分かれ、形づくるところ
川や海、滝や湿地など、水が通り、溜まり、境界をつくる場所を表す古語をまとめました。 流れの強弱や地形との関わりが、そのまま言葉に刻まれています。
- みぎは
水のほとり。水と陸が接する場所で、立ち止まり眺める視点を含んだ語。 - 水際(みづぎは)
水面と陸地の境目。波や流れが触れる、移ろいやすい場所。 - 水底(みなそこ)
水の底。流れや波の下に広がる、静かで奥深い領域。 - 滝本(たきもと)
滝の落ち口や滝の下。水が集まり、勢いを残す場所。 - 淀瀬(よどせ)
流れが緩やかになり、水がよどむ浅瀬。動と静が入り交じる水域。 - 滝つ瀬(たきつせ)
滝に近く、流れが激しくなる瀬。水音と勢いが際立つ場所。 - 滝壺(たきつぼ)
滝の水が落ちて深くえぐられた所。水の力が集まる地点。 - 下水(したみづ)
地面や物の下を流れる水。表に現れにくい流れを示す。 - 苔の下水(こけのしたみづ)
苔の下をひそやかに流れる水。目に見えぬ水の存在を表す表現。 - 庭潦(にはたづみ)
雨によって庭や地面にたまった水。一時的に現れる水の景。 - 洲浜(すはま)
水際にできた砂地の浜。流れや波がつくる柔らかな地形。 - 川床(かはどこ)
川の底や流路となる部分。水の通り道としての地形。 - 水路(みづぢ)
水が流れる筋や道。自然の流れとして形づくられた経路。 - 入江口(いりえぐち)
入江の出入り口。外の海と内の水域をつなぐ地点。 - 河口(かはぐち)
川が海へ注ぎ込む場所。淡水と海水が交わる境界。 - 潮目(しほめ)
潮の流れが変わる線。水の動きが目に見えて現れる所。 - 分水(みくまり)
水が分かれ流れる地点。流路が枝分かれする場所。 - 水門(みなと)
水の出入りする所。川や海の通路として開けた地点。 - 水脈(みを)
川や海の中で水が通う筋。流れの通路として意識される場所。 - 水分り(みくまり)
水の分かれ目。流れを分配する地点を指す語。 - 沢水(さはみづ)
沢を流れる水。山あいの湿り気と清らかさを帯びる。 - 川瀬(かはせ)
川の浅瀬。流れが速く、水音が立ちやすい場所。 - 浦廻(うらみ)
海岸が入り組んだあたり。岬や入江が重なり、波が寄り方を変える水際の地形。 - 門(と)
両岸が迫り、水の流れが出入りするところ。瀬戸や海峡のように、水が通る“口”となる場所。 - 筧(かけひ)
竹などで水を導くための樋。自然の水が“通る道”として形を与えられた水路の一種。
3. 水の流れ・動き|動勢としてあらわれる水のことば
流れる、満ちる、逆巻く、しずまる――水は常に動きの中にあります。 ここでは、水の速度・量・勢い・音といった変化を、そのまま捉えた古語を集めました。 静と動の移ろいが、語感として残されています。
- 流(りう)
水が連なって動くこと。一定の方向をもって進む水の働きを表す。 - 行く水(ゆくみづ)
流れ去っていく水。とどまらず進み続ける水の姿を示す。 - 注く(そそく)
水が一方向へ流れ入ること。量や勢いを伴って移動するさま。 - 滾る(たぎる)
水が激しく逆巻き、泡立ちながら動くこと。強い勢いを感じさせる。 - 石走る(いはばしる)
水が岩の上を勢いよく流れ、しぶきを上げるさま。 - 逆巻く(さかまく)
水が流れに逆らい、渦を巻くように激しく動くこと。 - 湧く(わく)
水が地中から自然に現れ出ること。止まらず生じ続ける動き。 - 湲る(ながる)
水がゆるやかに流れること。静かな継続を感じさせる表現。 - 走る(はしる)
水が勢いよく速く流れること。動きの鋭さを含む。 - ささらぐ
水がさらさらと音を立てながら流れること。軽やかな流動。 - 細流(せせらぎ)
小さく浅い流れ。音を伴いながら続く水の動き。 - 川音(かはと)
川の水が流れる音。動く水が生む響き。 - 滴る(したたる)
水が一滴ずつ落ちること。ゆっくりとした動作を表す。 - 渦(うず)
水が回転しながら巻き込む流れ。中心に引き寄せる動き。 - 渦巻く(うずまく)
水が円を描くように回り続けること。複雑な流動を示す。 - 打ち寄す(うちよす)
波や水が岸へ向かって寄ってくること。反復する動き。 - 澄み渡る(すみわたる)
水が濁りなく流れ、遠くまで見通せる状態で動くこと。 - 淀む(よどむ)
水の流れが弱まり、停滞すること。動きが失われた状態。 - 溢る(あふる)
水が満ちて外へこぼれ出ること。量の増大を伴う動き。 - 漲る(みなぎる)
水が勢いよく満ち、力を保ったまま動くこと。 - 漲らふ(みなぎらふ)
水が満ち広がり、動きを保ち続けるさま。継続的な勢い。 - 干る(ひる)
水が引き、量が減っていくこと。流れの衰えを含む。 - 潮騒(しほさゐ)
波が寄せることで生じる音。動く水がつくる響き。 - 岩注く(いはそそく)
波が岩に打ちかかること。砕ける水の勢いが、音や飛沫として際立つ動き。
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