3. 冬の季語としての雪の表現──俳句・和歌に登場する「雪」の言葉
「雪」は冬を代表する季語の一つとして、俳句や和歌などの伝統的な日本文学で繰り返し詠まれてきました。「初雪」「雪の朝」「雪解け」「雪吊り」「雪折れ」など、雪に関する季語はその情景だけでなく、感情や人生の一場面までも表すことがあります。
- 初雪(はつゆき)
その年初めて降る雪。冬の始まりを告げる代表的な季語。 - 雪解(ゆきげ)
積もった雪が溶け始めること。春の訪れを感じさせる語。 - 雪見(ゆきみ)
雪景色を眺めて楽しむこと。月見や花見に並ぶ日本的風情を表す。 - 雪吊(ゆきづり)
庭木が雪の重みに耐えられるよう縄などで支える冬の風物詩。 - 雪折(ゆきおれ)
木の枝が雪の重みで折れること。自然の厳しさを象徴する語。 - 雪女郎(ゆきじょろう)
雪の妖怪。美しい女性の姿で現れ、人を凍えさせるという伝承に基づく。 - 雪明り(ゆきあかり)
雪に反射した光により、夜でもほのかに明るく感じられる情景。 - 雪しまき(ゆきしまき)
田畑にまく雪。土壌を休ませたり、害虫を防いだりする農業の知恵。 - 雪渓(せっけい)
山中に夏まで残る雪の谷。涼を求める夏の季語としても用いられることがある。 - 雪山(ゆきやま)
雪に覆われた山。遠景の美しさや登山の厳しさを象徴する。 - 名残の雪(なごりのゆき)
春先に降る最後の雪。別れや過ぎゆく季節を象徴する季語。 - 里雪(さとゆき)
山ではなく、里(人里)に降る雪。暮らしの中の雪の情景を表す。 - 吹雪(ふぶき)
風に激しく舞う雪。厳冬の象徴的気象現象。 - 雪催(ゆきもよい)
雪が降り出しそうな空模様や気配。曇天の寒々しい雰囲気を含む表現。 - 雪の声(ゆきのこえ)
雪が降る時のしんとした静寂を「声」として表現した詩的季語。実際に音はしないが、雪の存在感を示す。 - 雪女(ゆきおんな)
雪の中に現れるとされる妖怪・伝承上の美女。冬の幻想的・怪異的なイメージを担う。 - 残雪(ざんせつ)
春になっても消えずに残る雪。季節の移り変わりや名残を象徴。 - 根雪(ねゆき)
一度積もると春まで解けずに残る雪。積雪地帯の冬を表す生活語でもある。 - 雪達磨(ゆきだるま)
雪で作る人形。子どもの遊びや冬の情景を象徴する季語。 - 雪掻き(ゆきかき)
積もった雪を除ける作業。雪国の暮らしに根付いた実用的季語。 - 雪道(ゆきみち)
雪に覆われた道。旅情や孤独、または困難な道の象徴として詠まれる。 - 雪の灯(ゆきのひ)
雪景色の中に灯る明かり。温かさや人のぬくもりを感じさせる情景語。 - 雪囲い(ゆきがこい)
雪から家や庭木を守るための囲い。北国特有の冬支度を表す語。 - 雪晴れ(ゆきばれ)
雪の降った翌日などに晴れ渡る空。白銀の世界と青空の対比が美しい。 - 六花(りっか)
雪の異称。雪の結晶が六角形であることから。風流な呼び名。 - 雪月夜(ゆきづきよ)
雪景色の中で月が輝く夜。幻想的な美しさを詠む季語。 - 雪景色(ゆきげしき)
一面の雪に覆われた風景。冬の典型的な情景語。 - 暮雪(ぼせつ)
夕暮れ時に降る雪、または雪の中の夕暮れ。静寂な美を含む。 - 銀花(ぎんか)
銀の花。雪や霜を花に見立てた表現で、季節の美を象徴。 - 冠雪(かんせつ)
山頂に雪が冠のように積もる状態。晩秋〜初冬の季節の変化を示す。 - 雪庇(せっぴ)
屋根からせり出して垂れ下がる雪。豪雪地の風物詩。危険の象徴でもある。 - 水雪(みずゆき)
水分を多く含んだとけやすい雪。春先に見られ、季節の移行を表す。 - 春雪(しゅんせつ)
春に降る雪。季の移ろい・名残や再生の気配を象徴する。俳句では春の季語。 - 雪景(せっけい)
雪の景色・雪景色の漢語的表現。俳句・随筆で広く用いられる情景語。 - 瑞雪(ずいせつ)
「めでたい雪」。豊年・吉兆の徴とされる伝統語。俳句では冬の季語。
次のページ:雪に関する日本文化の表現──生活・風習・芸術に息づく「雪」の言葉
コメント