2. 雪の情景を美しく描く──「しら雪」「淡雪」などの古語表現
「雪」は単に白く冷たいだけでなく、その美しさやはかなさを表現するために、多くの形容語が用いられてきました。「白妙の雪」「しら雪」「淡雪(あわゆき)」「はだ雪」などは、古語や和歌によく登場する表現で、それぞれ微妙に異なるニュアンスを持っています。
- 白雪(しらゆき)
真っ白な雪。純粋さや清らかさの象徴として使われる。 - 白妙の雪(しろたえのゆき)
白妙=白い布の意。白く柔らかな雪を詩的に表現した枕詞的表現。 - 淡雪(あわゆき)
軽くてすぐに消えるような淡い雪。春先のはかない雪を指すことが多い。 - 初雪(はつゆき)
その年最初に降る雪。冬の始まりを象徴する清新な情景を表す。 - たま雪(たまゆき)
玉のように美しく白い雪。和歌では雪の美称として多用される。 - 雪の花(ゆきのはな)
雪を花にたとえた美称。舞い散る様子を桜や梅と重ねて詠むことも。 - しら雪(しらゆき)
古語における「白雪」の表記。音や語感を重視した和歌的表現。 - 降り積む雪(ふりつむゆき)
静かに積もり続ける雪。時間の経過や深まる感情を表現する。 - 雪の衣(ゆきのころも)
雪を衣のように見立てた比喩的修飾語。自然が雪に包まれる様子。 - 白銀(しろがね)
銀のように輝く雪景色を形容する語。古語では雪景を詠む際の常套表現。 - 雪の声(ゆきのこえ)
雪が降る静けさを「音」として表現した詩的語。実際に音はしないが、情緒的な描写。 - 花の雪(はなのゆき)
雪を花にたとえた美称。特に春先の雪を「花びら」に見立てることが多い。 - 雪のかげ(ゆきのかげ)
月明かりに照らされた雪の光。夜の雪景色の幻想的な情景に使われる。 - 夜雪(やせつ)
夜に降る雪。しんしんと静かに積もる雪を表し、俳句や和歌でも使われる。 - 細雪(ささめゆき/ほそゆき)
細かく静かに降る雪。繊細さや哀愁のある情景に使われる。 - 雪華(せっか)
雪の結晶。極めて美しい自然の造形を称える表現。 - 雪片(せっぺん)
一片一片の雪のかたまり・結晶。文学では舞う様子を詠む。 - 今朝の雪(けさのゆき)
その朝に降った新雪。新鮮な感動や始まりの象徴。 - 六出(りくしゅつ/むつで)
雪の異称。雪の結晶が六角形(六放射)であることから生まれた雅語。和歌・俳句でも用いられる。 - 寒花(かんか)
寒中に咲く花の意から、雪・霜の美を花に見立てた詩語としても用いられる。静謐な冬景の比喩。 - 天華(てんげ)/天花(てんか)
天から降る花。雪を花びらに見立てた古語表現。仏典語彙とも響き合う神秘的な比喩。 - 瑞花(ずいか)
めでたい雪・吉兆をもたらす雪をいう雅語。五穀豊穣への願いを含意することもある。 - 玉屑(ぎょくせつ)
玉(宝玉)のかけら。きらきらと舞う雪片・氷片を玉にたとえた詩語。漢詩・俳諧でも用例。
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