夜空に浮かぶ月は、満ち欠け、出る時刻、季節や行事、その一つひとつに名前が与えられ、日本語の中で丁寧に呼び分けられてきました。
名月、朝月夜、月影、望月。
古語や雅語に目を向けると、月は天体であると同時に、時間や感情、人生の節目までも映す存在として語られてきたことが見えてきます。
この一覧では、古典や和歌、物語に根ざした月にまつわる古語・雅語を集めました。
意味だけでなく、使われてきた情景や余韻が自然に伝わるよう、言葉ごとに丁寧に触れていきます。
月にまつわる古語・雅語一覧
1. 月そのものの呼び名(擬人化・異名・雅語)
- 月人男(つきひとおとこ)
月を人に見立てた呼び名。若い男の姿として語り、月に気配や感情を宿らせる言い方。 - 桂男(かつらおとこ)
月の世界に住むとされる男。月の桂(中国伝承)と結びつき、美男子のたとえにもなり、転じて月そのものの別名としても用いられる。 - 月夜見(つくよみ)
月の異名。万葉集にも見える呼び方で、澄んだ月光の印象と響きが重なる。 - 月人(つきひと)
月を人に見立てて呼ぶ語。夜空の月に“存在感”を与える、万葉以来の言い方。 - 月夜見男(つくよみをとこ)
月を擬人化して呼ぶ語。万葉集にも見える表現で、月を“男”として捉える響きがある。 - 月読み男(つきよみをとこ)
「月夜見男(つくよみをとこ)」と同趣で用いられる表記・言い方。月を人格化し、近づけない憧れの対象としても詠まれる。 - 月人壮士(つきひとをとこ)
月を若い男に見立てる呼び名。七夕歌などで、月の姿を“人”として扱う表現が残る。 - 月人壮子(つきひとをとこ)
上の「月人壮士」と同趣の古い表記として見かける形。語感はそのまま、表記だけが揺れる。 - 久方(ひさかた)
本来は天・月に掛かる枕詞だが、転じて月そのものを指す語として用いられる。古語らしい余韻が強い。 - 月読み(つくよみ)
「月夜見」と同義の別表記。文脈によっては表記ゆれとして整理すると扱いやすい。 - 新玉の(あらたまの)
「年」「月」「日」「春」などにかかる枕詞。新しく改まることを連想させ、月に添えることで時間の始まりや清新さを強める。月、または月の光。転じて、月が明るく照らす夜そのものを指すこともある。万葉集にも見える基本的な月の呼び名。 - 月夜(つくよ)
月、または月の光。転じて、月が明るく照らす夜そのものを指すこともある。万葉集にも見える基本的な月の呼び名。 - 明月(めいげつ)
澄みきって明るく輝く月。名月と同義でも用いられ、月の清らかさそのものを強く印象づける語。
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