春の雲雀、夏の蛍、秋の鹿、冬の白鳥──日本の歳時記には、季節の気配をそっと運んでくれる「動物の季語」が、今も豊かな息づかいを見せています。
本記事では、春・夏・秋・冬・新年に登場する動物の季語を、鳥や獣、虫、魚、食べ物などのジャンルに触れながらやさしく紹介します。
俳句や短歌の題材を探している方はもちろん、作文・読書感想文・季節の挨拶文に「もう一歩、情緒のある表現を添えたい」と感じるときにも役立てていただける内容です。
動物の季語一覧
出典・参考:Wikipedia – 季語一覧
春の動物の季語一覧
初春(太陽暦2月・旧暦1月)
- アザラシ — 春先、流氷とともに姿を見せる海獣。北国の季語。
- 猫の恋 — 発情期の猫の鳴き声をさし、春の訪れを告げる風物。
- 鶯(ウグイス) — 「初音」が春の象徴。美しいさえずりが季節を告げる。
- 鶴帰る — 冬鳥の鶴が北へ戻る季節の兆し。
- 白鳥帰る — 越冬した白鳥が繁殖地へ向かう時期。
仲春(太陽暦3月・旧暦2月)
- 鷽(ウソ) — 早春に鳴き声がよく聞かれる小鳥。
- 雁帰る — 冬にいた雁が北帰行する情景。
- 雉(キジ) — 春に盛んに鳴き、姿を見せることから季語となる。
- 駒鳥(コマドリ) — 「ヒンカララ」という特徴的なさえずりの春鳥。
- 燕(ツバメ) — 春に南から帰る代表的な渡り鳥。
- 鳥帰る — 冬鳥たちが北へ帰っていく総称的な季語。
- 引鴨 — 越冬した鴨が北へ帰ること。
- 引鶴 — 冬のあいだいた鶴が連れ立って帰る様子。
- 雲雀(ヒバリ) — 春になると高く舞い上がりさえずる、春の代表的鳥。
- 蜷(ニナ) — 春に動き始める小さな巻貝の総称。
晩春(太陽暦4月・旧暦3月)
哺乳類
- 落し角 — 春に鹿が古い角を落とすこと。
- 仔馬 — 春に生まれる子馬。生命力の象徴。
- 子猫 — 春は出産期で、子猫が多く生まれる時期。
- 孕鹿 — 子を宿した雌鹿をさす季語。
鳥類(巣・営巣関係を含む)
- 鵲の巣 — 鵲(カササギ)が巣を作る季節。
- 烏の巣 — 烏が巣作りを始める時期。
- 雉の巣 — 春に雉が営巣する様子。
- 囀(さえずり) — 春の鳥たちが繁殖期に見せる力強い歌声。
- 鷺の巣 — 鷺が集団で巣を作る季節。
- 雀の子 — 巣立ち前のふくらんだ若い雀。
- 雀の巣 — 家々の軒先などに巣を作る春の風景。
- 巣立 — 雛が巣立つ瞬間を表す季語。
- 鷹の巣 — 高い木に大きな巣を作る鷹の営巣。
- 千鳥の巣 — 海辺の千鳥が巣作りを行う季節。
- 燕の巣 — 燕が軒先に巣を掛ける光景。
- 鶴の巣 — 鶴が営巣する、春の貴重な風景。
- 鳥の巣 — 春の鳥たちの営巣全般をさす。
- 鳥交る — 鳥たちの求愛・交尾行動が盛んになること。
- 鳩の巣 — 鳩が巣作りを始める時期。
- 孕雀 — 卵を宿した雀のこと。
- 雲雀の巣 — 雲雀が地上に巣を作る季節。
- 古巣 — 使われなくなった鳥の巣。季節の移ろいを感じさせる。
- 松毟鳥(マツムシリ) — 松林にすむ鳥で、春の風物として詠まれる。
- 麦鶉 — 麦畑に現れる鶉。晩春の景色。
- 百千鳥(モモチドリ) — 多くの鳥が一斉に鳴き交わす春の朝の情景。
昆虫・両生類
- 蛙(カワズ) — 春の田んぼで鳴き声が響く。
- 虻(アブ) — 春に活動を始める昆虫。
- 蚕(カイコ) — 春に育ち始める家蚕。
- 蝶(チョウ) — 春に舞い始める代表的昆虫。
- 蠅生る — 蠅が生き出す春の兆し。
- 蜂(ハチ) — 蜂が巣作りを始める季節。
- 蜂の巣 — 蜂が新しい巣をかけ始める時期。
- 花見虱(ハナミジラミ) — 花見の頃に見られる小さな虫。
- 春の蚊 — 早春に現れ始める蚊。
- 春の蠅 — 冬を越えて活動を始める蠅。
- 山繭(ヤママユ) — 春に孵化する大型の蛾の一種。
海の生き物
- イソギンチャク — 春の磯でよく見られる動物。
- 桜貝(サクラガイ) — 春の浜辺に打ち上がる淡い桜色の貝。
- 汐まねき(シオマネキ) — 片方の大きな鋏を振るカニ。春の干潟の象徴。
- 奇居虫(ヤドカリ) — 巣替えが活発になる春の磯の生き物。
春の動物 – 食べ物の季語一覧
初春(太陽暦2月・旧暦1月)
魚介類
- 鰔(サヨリ) — 透明感のある身が美しい早春の魚。
- 白魚(シラウオ) — 春を告げる小魚。踊り食いが有名。
- 公魚(ワカサギ) — 湖で釣れる淡水魚。冬〜早春が旬。
仲春(太陽暦3月・旧暦2月)
魚介類
- 子持鯊 — 卵を抱えたハゼの旬の味。
- 鰆(サワラ) — 「春を告げる魚」として有名。
- 鰊(ニシン)・身欠鰊 — 北国の代表的な春魚。
- 春鰯 — 脂の乗った春のイワシ。
- 春鮒 — 産卵期の鮒。春の風味。
- 目刺(メザシ) — 小魚を干した保存食。
- 眼張(メバル) — 春に旬を迎える磯魚。
- 諸子(モロコ) — 琵琶湖で春に美味しい小魚。
- 雪代岩魚 — 雪解け水で育つ春のイワナ。
- 雪代山女 — 春先の雪代で育つヤマメ。
- 若鮎 — 春に川を上る若い鮎。
- 浅蜊(アサリ) — 春が最も美味しい貝類。
- 飯蛸(イイダコ) — 小型のタコで、春に旬。
- 栄螺(サザエ) — 春の海でとれる貝類。
- 花烏賊(ハナイカ) — 春に水揚げされる小型イカ。
- 蛤(ハマグリ) — 桃の節句の象徴的な貝。
- 蛍烏賊(ホタルイカ) — 春の夜、光る姿が有名。
晩春(太陽暦4月・旧暦3月)
魚介類
- 玉筋魚(イカナゴ) — 春の名物「くぎ煮」の原料。
- 桜鰄(サクラウグイ / 柳鮠) — 春に産卵で川へ上る魚。
- 桜鯛(マダイ) — 春に色が映える縁起の良い魚。
- 菜種河豚(ナタネフグ) — 春に旬を迎えるフグの一種。
- 鱒(マス) — 春が盛りの淡水魚。
- 赤貝(アカガイ) — 春の旨味が強い貝。
- 鮑(アワビ) — 春に柔らかく仕上がる高級食材。
- 貽貝(イガイ) — 春の沿岸でとれる貝類。
- 海胆(ウニ) — 産卵前の春に甘味が増す。
- 烏貝(カラスガイ) — 春の川で見られる貝類。
- 細螺(キサゴ) — 春の海で採れる小さな巻貝。
- 蜆(シジミ) — 春の新物は味が濃い。
- 田螺(タニシ) — 春の田んぼで採れる貝。
- 常節(トコブシ) — アワビに似た春の高級貝。
- 馬刀(マテ) — 春の浜で採れる二枚貝。
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